2011ドラフト結果

1.指名選手
1位 川上竜平(光星学院高)外野手 右投右打
2位 木谷良平(日本文理大)投手 右投
3位 比屋根渉(日本製紙石巻)外野手 右投右打
4位 太田裕哉(日本製紙石巻)投手 左投
5位 中根佑二(東北福祉大)投手 右投
6位 古野正人(三菱重工神戸)投手 右投
育成1位 徳山武陽(立命館大)投手 右投
育成2位 金伏ウーゴ(白鴎大)投手 左投

2.補強ポイントとの合致度
 先日挙げた補強ポイントは以下の通り。

先発ローテ級投手>即戦力(守備型)ショート>セットアップ級以上のリリーフ投手=強打のサード>打撃のよい外野手

これに照らすと、今回の指名選手(育成除く)は、

(1) 先発ローテ級投手
中根(5位)、木谷(2位)
(2) 即戦力ショート
なし
(3) 即戦力リリーフ投手
太田(4位)、古野(6位)
(4) 強打のサード
なし
(5) 打撃のよい外野手
川上(1位)
((6) 守備型外野手)
比屋根(3位)

と整理することができます。
 先発用投手については、中根が肩に不安があること、木谷は現状ではプロで先発するほどの力があるとは思えないことからすると、最大の補強ポイントを満たすことができたとはいえません。また、強打のサードはまだしも、即戦力ショートの指名がなかったのはかなり痛いと思われます。その一方、リリーフ投手として、社会人投手を左右で2人指名したことは、評価できます。なお、比屋根については、社長交代に伴い、青木が今冬ポスティングとなる可能性が高くなったため、即戦力外野手、特に走力と肩を兼ね備えた外野手は、一応補強ポイントにはなっているといえます(ただ、以前述べたとおり、控えの頭数自体は揃っているため、優先順位は低いです。)。
 以上からすると、今回のドラフト指名は、補強ポイントの観点からすると、補強ポイントを埋めきることができず、また優先順位と指名順が合致していないため、あまり高く評価することはできません。

3.ドラフト戦略
(1) 1位指名
 今年の1位は、東海大甲府高の高橋で早々に固まっていましたが、当日は、中日・オリとの競合の末、落選することとなりました。高橋は、守備・走塁は並以下ですので、基本的には打撃で勝負というタイプです。高校通算71HRとAAAでの活躍から、スカウトのみならずネット上の評価も高いようでした。しかし、動画を見る限りでは、スイングスピードがさほど早くない上、ボールを十分に引き付けてから叩きつけるという、統一球に苦労しそうなタイプのように見えました。また、打撃に柔軟さがあるわけでもないので、育成にだいぶ時間がかかりそうです。大砲が欲しいというのはわからなくもないのですが、近時の大砲候補と打撃の質のみを比べると、中田や筒香より劣りそうであることを考えると、1位指名自体が誤りだったのではないかと思います。
 他の1位指名候補の中では、競合覚悟で藤岡へ行くか、野手であれば、青木放出を前提として、秋の調子が落ち気味であったとはいえ大社ナンバーワンの伊藤隼太か、2番目の補強ポイントである即戦力ショートを埋めるため、安達にするのがよかったのではないかと思います(ただ、安達は最初の1位指名をするほどかというとやや疑問はありますが。)。
(2) 外れ1位
 高橋落選の結果、外れ1位で、川上を単独指名することとなりました。川上の名前が呼ばれた時は思わず聞き間違えを疑ってしまいました。
 外野手は、大学・社会人や外国人による即戦力補強、あるいは素材のいい選手を下位で指名して、打撃を伸ばして戦力にすることが比較的容易ですので、高校生を1位指名すること自体、よほどの選手でなければ避けるべきであると思います。川上は、甲子園で3HRをマークする活躍をした選手で、足・肩も水準以上のものがありますが、ボールを遠くに飛ばす能力が中田・筒香級にあるというわけでもなく、ドアスイングのため内角をさばき切れないことも予想されます。結局、大砲候補を獲ったつもりが、中途半端な三拍子タイプになったり、打撃が全くものにならない可能性すらありえますので、非常にリスキーな指名であったといわざるを得ません。
 他の外れ1位候補としては、大学生投手で中後、伊藤和雄、高校生投手で松本、釜田、西川、歳内、即戦力ショートで安達などがありえました。個人的には、先発ローテ候補として、伊藤和、釜田、歳内のいずれかを獲得するのが良かったのではないかと思います。
(3) 2位指名
 テレビで見ていて木谷の名前が呼ばれた時は、川上に引き続き「はぁ?」と言わざるを得ませんでした。複数球団にリストアップされていましたが、上位指名されるほど評価が高いとは思ってもいませんでした。木谷は、最速145km程度の右腕で、変化球も飛びぬけたものがあるわけではありません。また、コントロールに難がある、クイックが遅いなど実戦的なタイプとはいえない素材型だと思います。これから伸びる余地があるとしても、この選手を2位指名するくらいなら、西川などの素材のいい高校生に行った方がよかったのではないかと思います。即戦力投手では伊藤和や佐藤(ホンダ)がよさそうです。
(4) 3位以下
 3位の比屋根は走力が武器で肩もそこそこある外野手なので、守備のいい選手が少ない今のヤクルト外野陣を考えると、指名すること自体は悪くないです。ただ、川上、木谷を1・2位で獲得したことを前提にすれば、この時点で外野を獲る余裕はなく、4位に残して他球団に先に獲られてしまえばそれまでの選手だったのではないかと思います。3位では、2位と同様、伊藤和・佐藤などの指名の方が望ましかったと思います。
 4位以下については、手薄なリリーフを補充するため太田、古野を指名し、故障からの復活を期待して中根を指名するという形であり、特に問題はないです。特に中根は、3年次までなら1位候補と言われていたほどの選手で、肩の違和感のため、今秋のリーグ戦では休養が続いていましたが、終盤から登板し始めており、復活に期待が持てます。明治神宮大会に出場するのでこれから非常に楽しみです。太田、古野はいずれも去年ドラフト解禁の選手です。太田は常時135km程度と特徴はありませんが、切れ味鋭いスライダー、スクリューをもち、右・左を問わずリリーフ登板してもらえそうです。古野は、常時140km程度ですが、多彩な変化球をもち総合力で勝負できるタイプです。
 また、育成枠では徳山、金伏と右・左の大学生投手を獲得しました。徳山は担いでから上から振り下ろす投げ方でMAX147kmを記録するストレートを持ちます。金伏はスリークォーターで、MAX145km程度の球威のある球を投げます。いずれも良い素材であり、かつ、割と実戦的なタイプですので、育成枠としてはよい指名だったのではないかと思います。

4.総評
 以上からすると、補強ポイントの補充が不十分であり、上位指名の顔ぶれに難があるため、下位でリリーフを中心にしっかり補強したことを踏まえても、合格点を出すことはできません。せいぜい40点程度といったところです。
 しかし、ドラフト時点での雑誌やネット上の動画など非常に限られた情報に基づいた評価ですので、選手の成長予想などはしっかりマークしていたであろうスカウトに劣ることは明らかです。戦略がイマイチであっても、戦力となる選手をしっかり指名したのであればさほど問題となるわけではないので、いい意味で私の評価を裏切ってもらいたいと思います。
 純粋な戦力評価以外では、a 東北関係の選手が多いことと、b 去年の北照高コンビに続き同一チームから複数名の指名をしたこと、c 近年指名した選手が在籍していたチーム(日本製紙石巻(久古)、三菱重工神戸(山本哲))からの指名が特徴的でした。aについては、去年の久古の成功から東北担当スカウトの八重樫さんの意見が強かったと思われます。また、b、cについてはパイプ構築の意図が窺えます。