2012ドラフトおさらい

いつの間にやら2013ドラフト会議が終了してしまいましたが、2013の前に、昨年のドラフト会議の結果について一言。
1.1位
 藤浪の外れ1位として社会人右腕の石山を指名。球速が常時140km程度と平凡で、変化球、コントロールともに絶対的な武器になる程度のものではない一方、ストレートには球速以上の威力があり、スライダー、フォーク、カーブとプロで使えるレベルの変化球を一通り投げられることから、肉付け次第では面白い素材になるのではないかと思っていました。
 実際には、リリーフで常時145km程度を記録するように、球威で押す貴重な1軍の戦力となってくれました。ただ、空振りを簡単に取れるような絶対的な変化球がなく、球威で押すにも剛球を何年も投げられるようなタフなタイプではないと思います。そのため、球威というよりもコントロールを磨き、ストレートと変化球とのコンビネーションで打ち取るようなタイプの先発を目指してほしいところです。

2.2位
 2位の大学生右腕小川は、リーグ戦で圧倒的な成績を残すのみならず、全国大会でも活躍していた一方、全体的なスペックはさほどのものではなく、先発で球威が落ちるとやや厳しいと思われること、また変則フォームで疲労が心配であることから、リリーフでの活躍を期待していました。
 しかし、小川は想像以上の技術と体力で、ヤクルトの壊滅的状況の先発陣の中で孤軍奮闘、各種タイトルまでとる大活躍でした。何より野球に対する意識の高さで、慣れてくる相手への対処や疲労対策を行ってくれると期待できます(もちろん今年ほどの成績を残すのはなかなか難しいとは思いますが)。

3.中位
 3位では高卒素材型の田川、4位では社会人左腕の江村を指名。
 田川は投手歴が浅いものの、最速150km近い速球を投げる豪腕で、将来のエース候補となりうる素材。思っていた以上に高い評価をされていますが、悪くはない指名だったと思います。
 他方、江村は140km程度の速球にスライダー、カーブなどの変化球を織り交ぜるオーソドックスなタイプ。投げる球自体は悪くないものの、コントロールがやや甘く、高めに変化球が入ることが目立つのが心配でした。実際、リリーフとして1軍で全く使えないわけではないものの、防御率4点台と微妙な成績に終わりました。

4.下位
 5位で社会人捕手の星野、6位で大学生ショートの谷内、7位で社会人右腕の大場を指名。
 星野は守備、打撃ともに一定のレベルにはあり、バックアップとしては十分な指名だといえます。
 谷内は、守備力の評価が高かったのですが、思ったよりも守備に不安があるようでした。他方、打撃は2軍で3割近く打てており、守備、打撃ともに磨きをかけ、1軍のショート争いに割り込んでもらいたいと思います。
 大場は大卒社会人ではあるものの明らかな素材型。速球も、それのみでプロで生きられるレベルではないので、速球、変化球ともにコントロールを向上させるしかないと思います。

5.総評
 全体的には中長期的なエース候補、即戦力のリリーフ、守備型のショートと補強ポイントを的確に埋める意図がみえました。ただ、当時は石山は3位でも取れたであろう(一部で他球団に指名の噂はありましたが)し、外れ1位に社会人ナンバーワンの松永に行くべきだったという点で不満があり、高評価はできませんでした。おそらく左腕は村中、赤川、八木、日高等で十分に足りているという判断で、右腕で最も評価していた石山に行ったのではないかと思います(実際には左腕軍団は壊滅してしまいましたが(泣))。しかし、基本的には左右関係なく、絶対値として能力の高いものを指名すべきだと考えています。プロでは左投手が多く、対左に慣れやすいため、左打者が必ずしも左投手を苦にするわけではないからです。
 ただ、1年経過した現時点においては、小川がこれだけの結果を残し、石山も想像以上の戦力となってくれたので、上記の点や藤浪を取れなかったことを措いても、かなりよい指名であったのではないかと思います。